ふとした瞬間に時計に目を向けた際、最初の1秒が通常よりも長く感じたり、秒針が一時的に止まったように見えたりする時間の錯覚の一種。
・人は読書をしたり、景色を眺めたりするとき、「サッカード(サッケードとも記される視線のジャンプ)」と「固視(静止)」を細かく繰り返して情報を得ている。
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・サッカードの際、視界がぶれないように脳は一時的に視覚情報の処理をストップさせる。
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・視線が時計に固定された瞬間、脳は「空白の時間」を移動後の映像(秒針が止まっている状態)で埋め合わせる。
●『The experimental evidence for subjective referral of a sensory experience backwards in time』(1981)
(感覚体験の過去への主観的参照に関する実験的証拠)
クロノスタシスの文脈で重要な「脳が感覚を過去へ遡って投影する(Backwards in time)」という概念を提示した。
著者は自由意志の研究で有名なリベット。
●『Illusory perceptions of space and time preserve crosssaccadic perceptual continuity』(2001)
(空間と時間の錯覚的知覚は、サッカード間の知覚の連続性を維持する)
クロノスタシスという言葉を定義し、そのメカニズム(サッカード抑制中の脳の補完作業)を明らかにした。
それ以前は、この現象は何と呼ばれていたんだろう?
(AIモード)
・Saccadic suppression (サッカード抑制):眼球運動中に視覚情報の感度が低下する現象
・Saccadic masking (サッカード・マスキング):運動中の「ブレ」を脳が認識しないように処理すること
・Stopped-clock illusion (停止時計錯覚):ふと時計を見た瞬間、秒針が止まっているように感じる具体的な体験を指す呼称
●『Auditory Chronostasis Hanging on the Telephone』(2002)
(電話に掛かる聴覚クロノスタシス)
クロノスタシスが視覚限定の現象ではなく、脳全体の時間構成メカニズムであることを示した。
●『Voluntary action and conscious awareness』(2002)
(自発的な行動と意識的な認識)
意図的結合(Intentional Binding)という概念を提唱。
自分の意志でボタンを押すと、その結果(音など)との時間的距離が縮まって感じられることを発見した。
これはクロノスタシスが「自己の行動」と深く結びついていることを示唆している。
●『Manual Chronostasis Tactile Perception Precedes Physical Contact』(2003)
(手動クロノスタシス 触覚知覚は身体接触に先行する)
腕を動かして物体に触れた際、脳は「接触した瞬間」を実際よりも過去(腕を動かしている最中)に遡って認識していることを発見。
クロノスタシスが視覚特有の現象ではなく、運動全般に伴う「感覚の空白を埋める仕組み」であることを決定づけた。
●『Chronostasis without voluntary action』(2005)
(自発的な行動を伴わないクロノスタシス)
外部刺激によって強制的に注意を向けさせられた場合でも時間の延長が起きることを報告。
「運動による補正」だけでなく、「注意の焦点が移動すること自体」が時間知覚を歪める要因であることを明らかにした。
●『Temporal dilation: the chronostasis illusion and spatial attention』(2010)
(時間的膨張:クロノスタシス錯覚と空間的注意)
「どこに注意を向けているか」という空間的な要因が、時間的な引き延ばしの大きさを左右することを示し、
時間と空間の知覚が脳内で密接に統合されていることを裏付けた。
●『Intended outcome expands in time』(2017)
(意図した結果は時間とともに拡大する)
単なる錯覚ではなく、「意図した結果(音など)」に対して脳がより長い時間を割り当てるメカニズムを提唱。
クロノスタシスが「自己主体感(自分がやったという感覚)」と深く関わっていることを現代的な視点で補強した。