実数が体であることと、複素数の四則の定義から、複素数全体の集合 \(\mathbb{C}\) が体になることを確認する。具体的には以下の[1]~[10]が成り立つことを確認する。 \[ \begin{array}{r l l} [1] & 和の交換律 & z_1+z_2 = z_2+z_1 \\ [2] & 和の結合律 & z_1+(z_2+z_3)=(z_1+z_2)+z_3 \\ [3] & 和に関する単位元 (0) の存在 & すべての z\in\mathbb{C} に対してz+0=z を満たす 0 が存在する \\ [4] & 和に関する逆元 (-z) の存在 & z+(-z)=0 となる -z が存在する \\ [5] & 積の交換律 & z_1 \cdot z_2 = z_2 \cdot z_1 \\ [6] & 積の結合律 & z_1 \cdot (z_2 \cdot z_3)=(z_1 \cdot z_2)\cdot z_3 \\ [7] & 分配律 & z_1 \cdot (z_2 + z_3) = z_1 \cdot z_2 + z_1 \cdot z_3 \\ [8] & 積に関する単位元 (1) の存在 & z \cdot 1 = z となる 1 が存在する \\ [9] & 積に関する逆元 (z^{-1}) の存在 & z \cdot z^{-1} = 1となる z^{-1}が存在する \\ [10] & 0 以外の元の存在 & 1\neq 0\ \end{array} \]
\(z_1+z_2 = z_2+z_1\) を示す。
・\(z_1 = x_1 + iy_1\)
・\(z_2 = x_2 + iy_2\)
とおく。
和の公式(2)より
\(z_1+z_2 = (x_1+x_2)+i(y_1+y_2)\)
\(z_2+z_1 = (x_2+x_1)+i(y_2+y_1)\)
実部、虚部はそれぞれ実数なので、実数の和の交換律より
\((x_1+x_2) = (x_2+x_1)\)
\((y_1+y_2) = (y_2+y_1)\)
実部、虚部が等しいので複素数の同値性(1)より
\(z_1+z_2 = z_2+z_1\)
\(z_1+(z_2+z_3)=(z_1+z_2)+z_3\) を示す。
・\(z_1 = x_1 + iy_1\)
・\(z_2 = x_2 + iy_2\)
・\(z_3 = x_3 + iy_3\)
とおく。
和の公式(2)より
\((z_2 + z_3) = (x_2+x_3)+i(y_2+y_3)\)
\(z_1+(z_2+z_3)=(x_1+(x_2+x_3))+i(y_1+(y_2+y_3))\)
\((z_1 + z_2) = (x_1+x_2)+i(y_1+y_2)\)
\((z_1+z_2)+z_3=((x_1+x_2)+x_3))+i((y_1+y_2)+y_3)\)
実部、虚部はそれぞれ実数なので、実数の和の結合律より
\(x_1+(x_2+x_3) = (x_1+x_2)+x_3\)
\(y_1+(y_2+y_3) = (y_1+y_2)+y_3\)
実部、虚部が等しいので複素数の同値性(1)より
\(z_1+(z_2+z_3)=(z_1+z_2)+z_3\)
すべての \(z\in\mathbb{C}\) に対して \(z+0=z\) を満たす \(0\) が存在することを示す。
・\(\forall z=x+iy \in \mathbb{C}\)
・\(0 = 0 +i0\)
(実数が体であることを前提としているので 実部, 虚部に割り当てる \(0\) は存在する)
とおく
和の公式(2)より
\(z+0 = (x+0) + i(y+0)\)
実部、虚部はそれぞれ実数なので、実数の和に関する単位元の存在より
\(x+0=x,\; y+0=y\)
実部、虚部が等しいので複素数の同値性(1)より
\(z+0 = z\) となり和に関する単位元が存在することが示された。
\(z+(-z)=0\) となる \(-z\) が存在することを示す。
・\(\forall z=x+iy \in \mathbb{C}\)
に対して \(-z = -x +i(-y)\)
(実数が体であることを前提としている。\(x,y\) は実数なので \(-x,-y\) は存在する)
・\(0 = 0 +i0\)
とおく
和の公式(2)より
\(z+(-z)=(x+(-x))+i(y+(-y))\)
実部、虚部はそれぞれ実数なので、実数の和に関する逆元の存在より
\(x+(-x)=0,\; y+(-y)=0\)
実部、虚部が等しいので複素数の同値性(1)より
\(z+(-z)=0\) となり和に関する逆元が存在することが示された。
\(z_1 \cdot z_2 = z_2 \cdot z_1\) を示す。
・\(z_1 = x_1 + iy_1\)
・\(z_2 = x_2 + iy_2\)
とおく。
積の公式(3)より
\(z_1 \cdot z_2 = (x_1x_2-y_1y_2) + i(x_1y_2+x_2y_1)\)
\(z_2 \cdot z_1 = (x_2x_1-y_2y_1) + i(x_2y_1+x_1y_2)\)
実部、虚部はそれぞれ実数なので、実数の積の交換律, 和の交換律より
\((x_1x_2 - y_1y_2) = (x_2x_1 - y_2y_1)\) ← 積の交換律
\((x_1y_2 + x_2y_1) = (x_2y_1 + x_1y_2)\) ← 和の交換律
実部、虚部が等しいので複素数の同値性(1)より
\(z_1 \cdot z_2 = z_2 \cdot z_1\) となり積の交換律が示された。
\(z_1 \cdot (z_2 \cdot z_3)=(z_1 \cdot z_2)\cdot z_3\) を示す。
・\(z_1 = x_1 + iy_1\)
・\(z_2 = x_2 + iy_2\)
・\(z_3 = x_3 + iy_3\)
とおく。
積の公式(3)より
\(z_2 \cdot z_3 = (x_2x_3- y_2y_3) + i(x_2y_3 + x_3y_2)\)
\(z_1 \cdot (z_2 \cdot z_3) = (x_1(x_2x_3 - y_2y_3)-y_1(x_2y_3 + x_3y_2)+i(x_1(x_2y_3 + x_3y_2)+(x_2x_3- y_2y_3)y_1)\)
\(=(x_1x_2x_3-x_1y_2y_3-y_1x_2y_3-y_1y_2x_3)+i(x_1x_2y_3+x_1y_2x_3+y_1x_2x_3-y_1y_2y_3)\)
\(z_1 \cdot z_2 = (x_1x_2-y_1y_2) + i(x_1y_2+x_2y_1)\)
\((z_1 \cdot z_2) \cdot z_3 = ((x_1x_2-y_1y_2)x_3-(x_1y_2+x_2y_1)y_3)+i((x_1x_2-y_1y_2)y_3+x_3(x_1y_2+x_2y_1))\)
\(=(x_1x_2x_3-y_1y_2x_3-x_1y_2y_3-y_1x_2y_3)+i(x_1x_2y_3-y_1y_2y_3+x_1y_2x_3+y_1x_2x_3)\)
実部、虚部はそれぞれ実数なので、実数の積の交換律, 和の交換律より
\((x_1x_2x_3-x_1y_2y_3-y_1x_2y_3-y_1y_2x_3) = (x_1x_2x_3-y_1y_2x_3-x_1y_2y_3-y_1x_2y_3)\)
\((x_1x_2y_3+x_1y_2x_3+y_1x_2x_3-y_1y_2y_3)=(x_1x_2y_3-y_1y_2y_3+x_1y_2x_3+y_1x_2x_3)\)
実部、虚部が等しいので複素数の同値性(1)より
\(z_1 \cdot (z_2 \cdot z_3) = (z_1 \cdot z_2) \cdot z_3\) となり積の結合律が示された。
\(z_1 \cdot (z_2 + z_3) = z_1 \cdot z_2 + z_1 \cdot z_3\) を示す。
・\(z_1 = x_1 + iy_1\)
・\(z_2 = x_2 + iy_2\)
・\(z_3 = x_3 + iy_3\)
とおく。
和の公式(2)より
\(z_2+z_3=(x_2+x_3)+i(y_2+y_3)\)
積の公式(3)より
\(z_1 \cdot (z_2 + z_3)=(x_1(x_2+x_3)-y_1(y_2+y_3))+i(x_1(y_2+y_3)+y_1(x_2+x_3)\)
実数の分配律より
\(=(x_1x_2+x_1x_3-y_1y_2-y_1y_3)+i(x_1y_2+x_1y_3+y_1x_2+y_1x_3)\)
\(=(x_1x_2-y_1y_2) +i(x_1y_2+y_1x_2)+(x_1x_3-y_1y_3) + i(x_1y_3+y_1x_2)\)
\(=z_1\cdot z_2+z_1\cdot z_3\) が示された。
\(z \cdot 1 = z\) となる 1 が存在することを示す。
・\(\forall z=x+iy \in \mathbb{C}\)に対して
・\(1 = 1 +i0\)
(実数が体であることを前提としているので 実部, 虚部に割り当てる \(1,0\) は存在する)
とおく
積の公式(3)より
\(z\cdot 1 = (x\cdot 1-y\cdot 0)+i(x\cdot 0 + y\cdot 1)\)
\(=x + iy=z\)
積に関する単位元が存在することが示された。
\(z \cdot z^{-1} = 1\) となる \(z^{-1}\) が存在することを示す。
・\(\forall z=x+iy\in\mathbb{C}\) ただし \(z\neq 0\)
に対して \(z^{-1}=\left(\frac{x}{x^2+y^2}\right)+i\left(-\frac{y}{x^2+y^2}\right)\)
とおく
\(z\cdot z^{-1} = \left(x\frac{x}{x^2+y^2}-y\left(-\frac{y}{x^2+y^2}\right)\right)+i\left(x\left(-\frac{y}{x^2+y^2}\right)+y\frac{x}{x^2+y^2}\right)\)
\(=\left(\frac{x^2}{x^2+y^2}+\frac{y^2}{x^2+y^2}\right)+i\left(\frac{-xy}{x^2+y^2}+\frac{yx}{x^2+y^2}\right)=1+i0=1\)
\(z \cdot z^{-1} = 1\) となる \(z^{-1}\) が存在することが示された。
・\(1=1+i0\)
・\(0=0+i0\)
とおく、実部が異なるので、複素数の同値性(1)より \(1+i0 \neq 0+i0\)
\(0\) 以外の元が存在することが示された。