特異点定理

~『ペンローズのねじれた四次元』(竹内薫)~

1965年のことである。ペンローズは, 友人のイゴール・ロビンソンとロンドン市内を歩いていた。

・・・

 とにかく, ペンローズは, ロビンソンと歩きながら数学の話をしていた。そして, 横断歩道を渡っている最中, その会話が, しばし途切れた。その瞬間, 電撃的にペンローズの脳に何かが閃いた。

 だが, その閃きが何であるかを冷静に分析する前に, 二人は横断歩道を渡り切ってしまい, ロビンソンとの会話が再開した。ペンローズも, それ以上は閃きを追求せずに, ロビンソンとの話題に戻ってしまった。

 それきり, その日は, 何事もなく時が過ぎていったが, 夜になって独りになると, ペンローズは横断歩道での閃きを思い出した。その閃きこそが, 「特異点定理」の証明だったのだ。