量子力学と最適制御

『路傍の奇跡』保江邦夫

スイスに渡った最初の冬、まだフランス語にも、また知り合い同士が毎日抱き合って左右の順にキスしまくる挨拶にも慣れていなかった僕は、できるだけそんなことにならないようにと願い、大学では人が滅多にこない図書館の学術誌書庫に籠っていることが多かった。

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そのうちに何やら工学系の棚の前に立ち止まった自分がいた。そして、数多く並べられた学術雑誌の束の中から、どういうわけか一冊を抜き出して開いてみた。

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すると、どうだ。
開いたページに並んでいた数式のうちの半分くらいが、シュレーディンガー方程式と似た方程式で埋められていた。

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だが、その論文は物理学の論文ではなく、工学、特に様々な機械装置を最適に制御するための「制御理論」と呼ばれる特殊な分野の論文だった。

●『The Onsager-Machlup Lagrangian and the Optimal Control for Diffusion Processes』(1980)