フェルマーの最小時間原理

『インフィニティ・パワー』S.ストロガッツ

 フェルマーには確信がなかった。計算は簡単ではないだろう。ある媒体の光源から、別の媒体の標的に向かい、境界面で肘のように曲がる光の取り得る直線経路は無限に存在する。

 これらのすべての移動時間を計算するのは難しい作業になったであろう。特に、微分法が発展する萌芽期のことであり、彼の二重交差法以外に、使える道具はなかったのだ。これに加えて、彼は誤った答えが出るのを恐れていた。クロードに宛てた手紙で、「大変な計算をした結果、不規則で現実離れした比率が出てきたらどうしようか。そして私の生来の怠け癖もあって、そのまま放ったらかしたままだ」と書いている。

 フェルマーは他の問題に取り組むなどして、5年が経過した。しかしついに彼の好奇心が勝った。1662年、彼は勇気を奮い起こして計算を行った。根気のいる辛い作業だった。しかし、複雑に絡み合った記号の茂みに取り掛かると、何かが見え始めた。数式の項は相殺し始めた。そしてそこに正弦関数の法則があったのだ!フェルマーはクロードに宛てた手紙で、彼がこれまでに行った中で、「最も類まれで、最も予想外の、そして最も幸せな」計算と書いた。「このような予期せぬ出来事にびっくりして、この驚きから回復できないほどだった」と記している。

 フェルマーは、彼の萌芽版の微分法を物理学に応用したのだ。このような試みを行った先人は誰もいなかった。そして、この計算を通してフェルマーは、光が最も効率の良い方法で伝播することを示した。直進するのではなく、最速に伝わるのだ。光は、可能な経路のうち、どうすれば、二点間をできるだけ速く到達できるかを知っているかのように振る舞うのだ。これは、微積分が何らかの形で、宇宙の基本に組み込まれていることを示唆する初期の重要な手がかりであった。

 その後、最小時間の原理は、最小作用の原理に一般化された。